有明海訴訟

少なくとも30年ほど前には、生態学は科学のなかではスミッコの存在だったように思う。その当時、生物学では飛躍的に分子生物学が進み、DNAやRNAという言葉も大学の一般教養課程で語り始められた。その陰にかくれて、生態学はひっそりとした生物分野だったように思う。

しかし、環境問題がこれだけ重大な問題としてとりあげられる時代になって、生態学は生物学の中で特に重要な位置を占めるように感じている。このような出だしで書くのは、今日、諌早干拓工事の差し止め訴訟の傍聴に行ったからである。

有明海は、日本の中でも広大な干潟で生物の宝庫である。近年、干潟の浄化作用が研究の結果ではこの干潟の浄化作用が強大であることがわかってきている。ラムサール条約には1980 年に締約している。有明海はすでに20年ほど前から(もっと以前から)その異変は言われていた。水俣での水銀汚染は有名http://www.kumanichi.co.jp/minamata/m-jiten.htmlであるが、確かに、経済成長期の日本は海や川は、有毒物質の垂れ流しの状態であった。
その後も、有明海の汚染は進んだ。ムツゴロウの減少と小型化が懸念された。有明海は少しずつやせ細っていった。

そこへきて、諌早湾干拓事業である。http://www.cityfujisawa.ne.jp/~559-mori/isahaya/目的は農業用地から諌早の水害への対策と変えながら、それでもこの干拓計画を強行しようとしている。あのギロチンと言われた諌早湾のせき止め工事により、有明海の心臓と形容された浄化作用が奪われた。さらに、そこは汚水溜まりとなり、汚れた水は有明海へ放流された。諌早湾は浄化作用が消され、環境破壊のための装置になってしまった。

もう一つの指摘が、ノリ養殖である。今年、東京の築地に行った時、ノリ専門店の最高級ノリは有明海産だった。(陳列棚の最上段を陣取っていた)このノリ養殖にともなう酸処理が問題であるというものである。http://www.fujiwara-shoten.co.jp/book/book464.htmノリ養殖がどれだけの影響を与えたのかは検証すべき問題である。かといって、それだけに問題を転化することも無謀だと考えている。