自爆テロ世界に拡散 朝日新聞8面

9・11後の米軍のアフガン侵攻後急激に「自爆テロ」が増えたという記事があった。アブドル・ラーマンという鼻つまみ者の青年が一躍「英雄」として認知される現象がどうして起きたのだろう。

一人の「英雄」が生まれた。アブドル・ラーマン。年齢は20歳前後。友人たちは「アブドラム」と略称で呼ぶ。父親に定職はなく、出稼ぎの親族からの送金に頼る。ここでは普通の難民一家の出身だ。昨年12月、憲法制定ロヤ・ジルガ国民大会議)のため厳戒警備が敷かれたアフガンの首都力ブールで、情報機開の捜査員とカーチエュスを展開した末、取り押さえられた。腹に巻いた爆弾を破裂させ、捜査員5人を巻き添えに死んだ。
「アブドラムを見習え。彼は最高の殉教者だ」。難民キャンプのモスクでの説教はいま、自爆賛美一色だという。英雄は半年前まで「鼻つまみ者一として有名だった。けんかや盗み、麻薬、レイプ、銃の密売。悪事の限りを尽くした不良グループの一員。それが突然、顔を見せたこともなかったモスクに、仲間と日参し始めた。ひげも急に長く伸ばした。昨年秋のことだ。アブドラムの幼なじみが一言った。「突然まじめになって、頭がどうかしたのかと思った。結局、そそのかされたのさ。『このままでは地獄へ落ちるぞ。罪を償え。自爆をやれば天国へ行ける』と」。自爆へ誘った人物は、アフガンのイスラム原理主義勢力カタリバーンの司令官だったとされる。

人が変わるということはどのようなことだろう。諸君4月号の「乃木希典」を読むと、ドイツ留学後に変わったという。北一輝も初期の民衆ロマン主義から変わったという。アブドル・ラーマンはなぜに変わったのか?そこが、この「自爆テロ」を読み解く本質があるような気がしてならない。『このままでは地獄へ落ちるぞ』というのは、まさに、どこかで聞き覚えのある言葉である。
さらに、「自爆テロ」が増えたことを記者は次のように分析している。

イラクでも、昨年3月の開戦前までは例がなかった。自爆が中東に広がる背景について、エジプトのイスラム系雑誌「アルマテール・アルジャデイード」のガマル・スルタン編集長は「イラク戦争で米国の圧倒的な軍事力を見せつけられて、中東・イスラム圏の若者の問には米国に対抗するには自爆しかないという思いが広がっている」と語る。

これを読むと、「自爆テロ」は一般的なことでなく、きわめて特殊な行為であったことがわかる、しかし、「自爆テロ」がイラク戦争後、空間的広がりと、頻度が極めて高くなってきている。すでに、イラクだけでも、30回、犠牲者は573人におよんでいる。次に、イスラエルパレスチナで20回、125人の犠牲者である。「自爆テロ」は少なくとも、イラク戦争前までは限定的な現象であったが、それが、世界に拡散しはじめたということになる。