輪の中

僕は線路の内側で生きている。
というか、線路を越えることができないのだが。
かといって、僕は、ロシアの少女が花売りで
花を売る。
多分、汚れた精液が少女の唇を濡らすのだろうが。
そうさ、閉ざされた閉鎖空間で
僕は、死んだ妹と昭和40年代のラジオで会話するのさ。
しかし、東京へ行くために線路を横断する。
そのために、僕はツルハシを準備した。
日曜大工の店で。
そうだろう、僕に不釣り合いなその店で。
僕は、ベッドの上に死んだ妹のパジャマをキレイにヒトガタにしき、
その上に例の旧式ラジオを置いた。
僕は、僕のベッドごとツルハシで一撃をくらわした。
ラジオは断末魔の妹の声を響かせた・・・
ように思った。
結局、僕は、何の苦労も無く線路を横断した。
しかし、僕は新たな空間がこわかった。
・・・
でもね、閉鎖空間を脱出しても
キミも僕も新たな閉鎖空間に移動しただけなんだ。
わかるだろう。
大型の地球儀に輪投げの輪を置いてみなよ。
輪から外に出ても
やっぱり輪の中さ。