連続読物 レンジ系 その12〜23

レンジ系 その1〜6 http://d.hatena.ne.jp/junhigh/20040329
レンジ系 その7〜11 http://d.hatena.ne.jp/junhigh/20040405


12

そろそろ、はっきり言おう。
僕はマックからウインドウズに乗り換えた裏切り者である。
それも、単に仕事のために。
仕事だけのために。
バカなバカなバカな。
そんな、バカな。
偽クリスタルの山を僕は見た。ゴミだ。ゴミだ。ゴミだ。
どうする。汚いクリスタル。角が甘いクリスタル。
ヤスオはクリスタルで稼いだのだが。
はっきり言おう。
確かに、PC98は買ったよ。そのころ、MS-DOSで。
ウインドウズ以前で、すぐに、パソの世界から撤退したんだ。
それから、マックのクラシックを買って。それから、マックの世界なんだ。
夢はさめない。
夢はかなえられない。
いつも。
いつも、いつも。
『ボク』は最初からウインドウズなんだ。
大事なのは、最初から。
どうして、どうして。
だってだって。
仕方がないほど、僕のマックは外部からの不正アクセスに泣かされて。
撃退の壁は炎。
わかるかな。
『ボク』は自衛隊員である。
そう、1年前から、イラクに行くことを考えていたんだ。
偉いだろう。
考えていたんだ。
偉いだろう。
僕は偉くもないけど。
『ボク』は自衛隊員である。
だから、死ぬことも
殺すことも考えていたんだ。
偉いだろう。
偉くない。
そうかも。


13

『ボク』にとっての任務は、自衛隊の任務と合致するのか?合致しない場合でも、『ボク』は自衛隊員であれば、その法律によって拘束される。
『ボク』にとっての任務は、自衛隊の任務と合致するのか?合致しない場合でも、『ボク』は自衛隊員であれば、その法律によって『ボク』はしばられる。しばられていしまう。(ああ・・・ネムイ)
今、いったい何時なんだ。時間感覚の必要でない者にとって、時計は無意味である。何時だってよいし。時間が時間としての特性を維持していれば、それはそれで、みんなにとっていいだろう。世界の時間が勝手にその場所で進む速さを変えたり、不調和を及ぼさないのなら、それでいい。休火山が突然に爆発したり・・・。
自衛隊の任務)
第3条 自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。
2 陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。
『ボク』は、たたきこまれたんだ。国を守ることを。守るために必要なことを。『ボク』は、たたきこまれたんだ。守るためには、『ボク』が何をするべきかを学んだ。寛寿郎にたたきこまれたんだ。
毎日、毎日、毎日・・・・
『ボク』は、寛寿郎にきたえられた。日本の国の守り方を。
「守るためには死ぬのだ」と寛寿郎は言った。
「何かを守るために『ボク』は、死ぬのですか」
「そうだ」
「『ボク』は死ぬことによって、誰かを守るのですか」
「そうだ。死ぬことによってしか、守れないものがある」
毎日、毎日、毎日・・・・
『ボク』が死ぬことで、何が守れるのだろうか。
「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため」
それで、守れるのか。守れるのか。守れるのか。
ハーバーマスにとってテロリズムは近代化のトラウマの効果であり、それが世界中に病的なスピードで蔓延したとされるが、それに対してデリダテロリズムを、約束、希望、自己肯定としていくらか病理的に理解された未来につねに焦点をあてる
 「テロルの時代と哲学の使命」より
それは、紋切り型の法文が、その精神を生かせるための飛翔が必要であるように、『ボク』は飛翔する必要があった。しかし、『ボク』は飛翔することはできなかった。
飛翔?
何なんだ。それって。


14

ムリを言わないでくれ。どうでもいいじゃん。
どうでもいいジャン。どうでもいいジャン。どうでもいいジャン。
ジャン。ジャン。ジャン。ジャン。ジャン。ジャン。
寛寿郎。どうでもいいジャン。ジャン。ジャン。
そうだろう。
『ボク』は呪っているんだよ。それでいいジャン。
その結果、寛寿郎が死んだことを誰が証明できるんだ。
『ボク』が寛寿郎を殺せるわけないだろう。
呪いで殺すことには、別の病名がつくんだ。
わかるかな。
全世界の人々は知るべきなんだ。
呪いが、殺すことはないんだ。呪いは方法であって結果でない。
全世界の人々は知るべきなんだ。
多くの病死の幾分かは呪いによって死んでる事実を。
幾分かは・・・、そうだ、ネムイ。
猫の生活を知っていますか。
猫の話を書けば、それで、いいとは思ってません。
だって、そうだろう。
そうでしょう。
暗い、暗い、暗い。クライ。
僕は、ハルキではないのだから。
拘束された。拘束された。拘束した。
わかるナイ。わかりエリ。かさなりアキ。
クソ寒いハル。
『ボク』は決心した。
寛寿郎を殺すことを。
電話しよう。そうしよう。
初めての電話。
殺すためにかける電話。
殺すために『ボク』は電話する。
わかるだろうか。
少なくとも、呪いよりも確実に。


15

気持ちの悪い夜、僕は起きていることが好きです。背後に霊的なさざめきを感じたりして、気分的は緊張と弛緩をくりかえして、波状的な感情と記憶の断片が見えたりして、起きていることが好きです。
だけど、気持ちの悪い朝は嫌いです。ですから『ボク』は朝の時間帯に目が覚めることがイヤです。わかりますか。『ボク』が言っていること。5時は朝だと感じますが、4時は朝なのだろうか。3時44分あたりは、微妙な時間です。ビミョウ。ミョウ。
だからさ。
だから・・・、3時44分に『ボク』は寛寿郎に電話したんだ。非通知で。
コールが10回目で切ったけど。
自衛官たるものは、いつ何時に、どのようなことが起こるのかわからない。よって、いつでも、出動ができるように」
笑わせるなよ。寛寿郎。寝てやがる。
『ボク』は、黒いコートを着て外に出た。
みんな聞いたか。「外」へ。
『ボク』はズボンの裾の裏側に、ナイフをガムテープで貼り付けたんだ。
『ボク』は、近くの河原の道を歩いた。
予感がした、『ボク』は人を殺すのではないかという。
誰も来ない。『ボク』は全身に殺気をみなぎらせていると思った。
「怖じ気づいたか。クックックック・・・」
『ボク』は、全世界を支配しているような気分になった。
「『ボク』は、悪魔なんだ。近寄るな。近寄るなよ」
『ボク』は、まだ、『』付きだが、これがとれたとき、世界は恐怖するんだ。わかったか。
そのとき、河原の道の向こう側から人が歩いてきた。
来たな。
誰だ。
誰なんだ。
・・・・
「うっ、寛寿郎ではないか?」


16

『ボク』にとって大事なことは何だろう?どうでもいいじゃん??
そうなんだ、僕は『ボク』について重要なことは避けてきたんだ。
逃げたんだ。
逃げた結果、僕は朝の早い時間に、寛寿郎に対面している。
寛寿郎はどうしてここにいるんだ。
寛寿郎はなぜここにいるんだ。
『ボク』は身構えた。
『ボク』にが寛寿郎を殺した新聞記事が、目に浮かんだ。
寛寿郎。お前を殺してやる。
『ボク』にとって、殺してもころさなくてもどうでもいい奴を、殺したとして、はて、それって採算にあっているのか。
『ボク』は殺したとして、世間の皆さんは喜ぶのだろうか??
ほとんど、呪いという不確定要素だけで『ボク』は殺そうとしていたんだ。
だから
だから
だから、現実という確定要素で殺そうとしたんだ。

、寛寿郎という
獲物
が来ている。
現実として
獲物
がそこに居る。
だから、『ボク』は殺すんだ。
すでに、自動的に『ボク』は、ズボンの裾のナイフを取り出していた。
『ボク』にとって
『ボク』は
何なんだ。
消えた。
消えた。
消えた。
シャボン。
どうでもいいじゃん。
そう、どうでもいいじゃん。
『ボク』の目の前に寛寿郎がいる。
だから
だから・・・
だから・・・・・
『ボク』は寛寿郎を殺すんだ。


17

呪い、呪い、呪い
殺す、殺す、殺す
ナイフ、ナイフ、ナイフ
そうだ、『ボク』は幸福だったのだろうか。
一度も、幸福だと感じなかったのではないか。
『ボク』は幸福を知らないから、幸福であると誤解している。『ボク』は不幸であっても、幸福だと考えている。誤解の上で生きているような人間。
人間。人間。人間。
そうだ、『ボク』は、家族がいるのか。
一度も、家族がいると感じなかったのではないか。
『ボク』は家族を知らないから、家族がいると誤解している。『ボク』は家族がいても、家族がいないと考えている。誤解の上で生きているような人間。
人間。人間。人間。
呪い、呪い、呪い
殺す、殺す、殺す
ナイフ、ナイフ、ナイフ
人間。人間。人間。
冷静だ。『ボク』は、寛寿郎を殺す。
冷静だ。『ボク』は、自分を殺す。
冷静だ。多分・・・。
『ボク』は、冷静だ。
だからさ、子どもの頃にもらったプレゼント。
今はナイ。
ナイのさ。ナイ。ナイ。
『ボク』はナイフの柄をにぎりしめた。
『ボク』は寛寿郎の生温かい内蔵の感触。
好きさ。
『ボク』は、殺したんだ寛寿郎。
もう、終わりだね。終わり?
何が?
何が?
存在の何が?
だからさ。
『ボク』の何が。
あああああ・・・・・・。
ううううう・・・・・。
ガルガルガル・・・・・・。
ゲロ。
死んだ。
やった。
死んだ。
ボク?
僕?
えっ。


18

夢をみてたんた。そう思うことで幸福になれることがあるよね。
僕は寒けのする朝に一本道ですれ違うことに恐怖するんだ。
だじゃらさ、キミも同じだろう?
『ボク』み言ってるんだ。わかる。
キミを殺人者にすることも、夢の一部にすることも僕の自由なんだ。いや、気まぐれなんだ。きまぐれさ。
僕は『ボク』を殺人者にしても、僕の人生には関係ないのさ。
そう、鼻クソくらいに関係ないのさ。だからって、キミをそうカンタンには殺人者にしないし、キミの思いをとげることもさせないよ。
なぜって?だってそうだろう。
僕は疲れているし、気分屋だし、僕は僕の夢も実現していないからさ。
やすやすと、他人の願いを現実にするほどのお人好しでもない。
だからといって、書くよ。
さあ、続きを書くよ。
『ボク』は幻覚を見ていたの?
あと、5mで寛寿郎とすれ違う。
早く用意しなければ、『ボク』は座り込み、ズボンの裾にガムテープで貼っていたナイフを取り出す。
寛寿郎は、座り込んでいる『ボク』をのぞき込むように見た。
「どうしたんだ」
「いいえ、どうもしていないであります」
「どうもしてないわけないだろう」
「ワタクシは散歩中であります」
「どうして座り込んだんだ」
「少し用事を思い出したであります」
「立て!」
「立つであります」
『ボク』は手に握りしめていたモノを、前につき出すようにした。
「・・・どうしたんだ。そのボールペン」
『ボク』は手に握りしめているものを見た。
「ボールペンであります」
「だから、それをどうするんだ」
「ボールペンをさしあげるであります。袖振り合うも多少の縁であります」
「冗談言うなよ」
「冗談でありました」


19

僕はRadioheadの「Lucky」が好きなんだ。1日1回ほど聴いているよ。だいぶ前のことだけど、思い出すと、いや、思い出すのでなく、突然、頭をよぎるんだけど、僕は殺人者ではないかと。『ボク』の話にもどそう。
「幸運であります。このような朝に、寛寿郎殿と出会うとは」
寛寿郎は『ボク』をつま先から頭までなめ回すように見た後
「すまん、オレが悪かった」と言った。
「何がでありますか」
「オレは、・・・、いや、いい・・・」
「何がでありますか」
「何がでありますか」
「何がでありますか」
「幸運であります。このような朝に、寛寿郎殿と出会うとは」
寛寿郎は目に涙をうかべていた。
「すまん」
「言っている意味がよくわからなであります」
「殺してくれ。わかるか?意味が。殺してくれ」
「なぜでありますか」
「オレは、お前にとってデビルなんだよ」
「デビルですか?」
「どうやって殺すでありますか」
「今から話すから信じてくれ」
寛寿郎は、己を殺すための手段を話し出した。
オレは、河原に穴を掘っている、例の独裁者の穴蔵のようなものだ。そこにオレが入る。お前は、その穴を塞いで、外見からは、そこに穴があるように見えないようにしてもらいたい。それだけだ。
『ボク』は寛寿郎を見た。寛寿郎は『ボク』を見た。まるで、恋人どうしのように。寛寿郎が『ボク』を抱きしめて『ボク』の耳元でつぶやいた。
「好きだ」


20

スキサ、スキサ、スキサ、お前の全てを・・・やめてくれよ。
そうだろう。ヘ・ン・タ・イ。
「好きでありますのですか」
「YES」
「あなたサマが、『ボク』を好きであらされますか」
「そうなんだよ。好きであられるのである」
ゾウリムシの愛はゾウリムシの中で収められる問題か。
誰が提出した命題なのか。
ゴキブリへの愛も同義なのだが。それは、かなり深い問題なので、いわゆる、相似形ということですませよう。
真の殺意はこのような時に起こるべき問題だ。
『ボク』はボールペンの騎士ではない。
殺す。
だって、殺していいと、言ったんだモン。
お前が、穴蔵で死ぬことを望んでも、『ボク』はお前を、ここで
ここで
ここで
ここ

殺すことも可能である。
可逆ではないが。
スキサ、スキサ、スキサ、お前の全てを!
スキサ、スキサ、スキサ、お前の全てを!
スキサ、スキサ、スキサ、お前の全てを!
スキサ、スキサ、スキサ、お前の全てを!
ウザイ!!
ウザイ! ウザイ! ウザイ! ウザイ! 
そうだろう。お前はウザイ! 
しかたないほど。どうしようもないほど。
「何が、好きでありますか」
「だから、言ったろう。『ボク』なんだよ」
ウザイ! ウザイ! ウザイ! ウザイ! 
「ゾウリムシ 野郎」


21

『ボク』が『ボク』をして『ボク』ならしめる。オレはそう考えている。そう考えたことによってオレはオレでなくなる。
「わかるか腰抜け」
「何がでありますか」
「オレは感じていた。お前がオレを呪っていることを。それはいい。それは、ちっぽけな問題さ。いや、問題ですらない。お前にとっては、真夜中の呪いの行事はたいへんでも、オレにとっては、知らずに踏みつぶしているアリの死のような問題さ」
「・・・どうして、わかったでありますか」
寛寿郎は、少し考えて言った。
「何故って、お前は恋をしたことないのか。恋をすれば、相手がどんなことを考えているのかわかるものさ。時として、大きな勘違いもあるが」
かなり、明るくなった。
仕事は、さっさと片づけようぜ。
「シゴト・・・、何でありますか」
「オレを殺すこと。寛寿郎という存在をこの世から消すこと。それが、お前のシゴトで、『ボク』が『ボク』をして『ボク』ならしめるための必要条件でもある」
バイ・バイ・ベイベ
キレイさっぱりオワカレさ
キレイさっぱりオダブツさ
この世にミレンはありゃしない
バイ・バイ・ベイベ
オマエの涙はシンジツさ
オマエの嘘はキマグレさ
の世にミレンはありゃしない
「寛寿郎殿、それはなんですか」
「口癖だ。悪いか」
「いいえ、けっこうなものを聞かせていただきました」
「バーカ、お前はバカなんだ」


22

エリカ、朝だよ。起きなさい。「ハーイ、ママ」
朝は起きるものだと、誰が決めたんだ。昼間に働くという暗黙の多数の行動が朝のエリカを起こすのだろう。明るく起きるエリカ。
色白のエリカは、美しい少女、いや、もうオンナかもしれない。
男のイチモツをよだれを垂らして舐め尽くしても、発射30秒後には、記憶を無くすようなオンナかもしれない。
「ブトレヒトに行きたい」
エリカがそのような思いを抱いている時に、寛寿郎は岸辺の穴蔵に身を潜めていた。
「『ボク』お願いだから、オレをこの穴蔵の中で死なせてくれ」
「命令ですか、懇願ですか」
「どちらでもいいから、オレを死なせてくれ。最後の願いがある。この手紙をポストに入れてくれ」
「・・・エリカ」
「オレの娘だ。かわいいエリカ。お前が起きる頃、オレは死の旅路を歩み始める。エリカのクリットがキレイに剥け始める頃、オレは死ぬ」
「寛寿郎殿。ふさぐであります。よろしいですか」
「すまん、もう一つだけ、最後の願いをきいてくれ。『ボク』、穴蔵の入り口に顔を寄せてくれないか」
『ボク』は、わかっていた。その後の寛寿郎の行動が、それでも、『ボク』は、寛寿郎の言う通りにした。
寛寿郎は、『ボク』に接吻した。
「あっ、寛寿郎殿・・・」
「『ボク』、元気でいるんだぞ。とりあえず、オレは死ぬ」
「それでは、ふさぎます。上官・・・、寛寿郎殿。」
『ボク』は入り口を砂でおおい、さらに、入り口がわからないように周りと違和感がないようにした。
「サヨナラ。寛寿郎殿」


23

エリカの悩みは寛寿郎とは違うだろう。たとえば、起きた時のくせ毛の問題とか、歯磨きのチューブから出が悪いとか。別に侮っているわけではない、もっと言えば、生理がこないとか。ミョウに、そう、半分だけ皮に隠れているクリットがいとおしいとか。
DVDの「大理石の男」を観たのはエリカのキマグレで、単に、大理石の男が気持ちよさそうだったからにすぎない。
僕は思うんだが、エリカを登場させて、この物語に進展はあるのか。いや、この話は、それ自体どうでもよい職場の朝のラジオ体操みたいなものかもしれない。イチ・ニ・サン・シ、ゴ・ロク・シチ・ハチ。
そうだ、案外、僕らはオートマティックに生きている。
イチ・ニ・サン・シ、ゴ・ロク・シチ・ハチ。
することを決めていないようで
実は、予定通りの行動をしている。
イチ・ニ・サン・シ、ゴ・ロク・シチ・ハチ。
イチの次はニで、ゴの次はロクなんだ。
「寛寿郎は死んだかな。今ごろ」と、『ボク』はぼんやり考えていた。
寛寿郎が死んだとして、『ボク』にどのような変化が生まれるのだろう。
多分、そうタブン、『ボク』は自衛隊には戻らないだろう。
『ボク』の同僚がイラクにいる。だからといって、何にも思わない。
『ボク』は冷淡なのか。
イチ・ニ・サン・シ、ゴ・ロク・シチ・ハチ。
『ボク』は何なのか。
イチ・ニ・サン・シ、ゴ・ロク・シチ・ハチ。
『ボク』はどうしてここにいるのか。
イチ・ニ・サン・シ、ゴ・ロク・シチ・ハチ。
「ついてない」とエリカが言った。
「部屋に帰ろう」と『ボク』が言った。
「苦しい・・・」と寛寿郎が言った。
そうなんだ、地球上の人間も人間以外の動物も植物もつぶやいているんだ。
「イチ・ニ・サン・シ、ゴ・ロク・シチ・ハチ」