H16. 4. 7 福岡地方裁判所 平成13(ワ)3932 損害賠償請求事件

◆H16. 4. 7 福岡地方裁判所 平成13(ワ)3932 損害賠償請求事件
http://courtdomino2.courts.go.jp/Kshanrei.nsf/webview/9150D634B0A70BFC49256EA50001E63B/?OpenDocument

3 結論
以上の次第であって,原告らの被告らに対する本件請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
なお,前記のとおり,当裁判所は,本判決において,本件参拝につきその違憲性を判断しながらも,結論としては,本件参拝によって原告らの法律上保護された権利ないし利益が侵害されたということはできず,不法行為は成立しないとして原告らの請求をいずれも棄却するものであり,あえて本件参拝の違憲性について判断したことに関しては異論もあり得るものとも考えられる。
しかしながら,現行法の下においては,本件参拝のような憲法20条3項に反する行為がされた場合であっても,その違憲性のみを訴訟において確認し,又は行政訴訟によって是正する途もなく,原告らとしても違憲性の確認を求めるための手段としては損害賠償請求訴訟の形を借りるほかなかったものである。一方で,靖国神社への参拝に関しては,前記認定のとおり,過去を振り返れば数十年前からその合憲性について取り沙汰され,「靖国神社法案」も断念され,歴代の内閣総理大臣も慎重な検討を重ねてきたものであり,元内閣総理大臣中曽根康弘靖国神社参拝時の訴訟においては大阪高等裁判所の判決の中で,憲法20条3項所定の宗教的活動に該当する疑いが強く,同条項に違反する疑いがあることも指摘され,常に国民的議論が必要であることが認識されてきた。しかるに,本件参拝は,靖国神社参拝の合憲性について十分な議論も経ないままなされ,その後も靖国神社への参拝は繰り返されてきたものである。こうした事情にかんがみるとき,裁判所が違憲性についての判断を回避すれば,今後も同様の行為が繰り返される可能性が高いというべきであり,当裁判所は,本件参拝の違憲性を判断することを自らの責務と考え,前記のとおり判示するものである。

この結論にあるように、原告の損害賠償請求を退け、形式上は首相と国側の勝訴です。しかし福岡高裁が「現行法の下においては,本件参拝のような憲法20条3項に反する行為がされた場合であっても,その違憲性のみを訴訟において確認し,又は行政訴訟によって是正する途もなく,原告らとしても違憲性の確認を求めるための手段としては損害賠償請求訴訟の形を借りるほかなかったものである」と述べているように、ここでは、賠償請求という形で、小泉首相靖国参拝違憲性をあきらかにしようとしたものです。