グロバリゼーションと憲法「改正」

双極的世界構造であった東西の冷戦構造の崩壊後、アメリカ主導にすすめられたグロバリゼーションは、いくつかの克服する課題を持っている。まずは、EUの問題である。ヨーロッパの問題をそのまま放置していたのでは、グロバリゼーションの進展は望めない。EUはヨーロッパがいかにグロバリゼーションに適した地域づくりをすすめるかという主体的な問題であり、同時に、アメリカにとってもEU化がすすむことで、世界の覇権国としてのアメリカを保つための大きな基盤ができる。

もう一つが、国連の問題である。アメリカは国連とは一定の距離を置きながらも、そこでの支配力は維持するために、多くの同盟国や開発途上国に圧力をかけてきた。覇権国アメリカにとって国連は邪魔であるが、同時に利用できる部分があれば、これを最大限利用したいと考えている。

EUや国連の問題では、アメリカはユニラテラリズムとか一国主義と呼ばれるやり方で強引に自分の主張を通している。それは、グロバリゼーションによるアメリカの世界の位置を確固とするためには、アメリカには当然行動のように解釈されるのだろう。

さて、日本をめぐる情勢であるが、アメリカにとって現在の日本の憲法9条が邪魔でしょうがない。もともと、この9条の成立についての僕の考えは、03年の12月4日に次のような文章を書いている。

 僕自体の憲法9条に関するスタンスは、その成り立ちを考えると、昭和天皇を戦犯として東京裁判の被告にしないことを最優先にした結果であると思う。憲法第1章において、天皇を象徴として位置づけ、それだけでは、連合軍側の合意を十分に得られないがために、マッカーサーが9条において、日本が軍国主義化しないための歯止めとして打ち出したものだと言われている。

 そうであるならば、天皇が戦争責任から逃れたときに、その本来の使命は終わっていた。終わっていたのに、今まで憲法9条がそのままであったのは、憲法9条を論議改憲することは、直接的に天皇の戦争責任を再度論議することにほかならないからである。少なくとも、過去において、9条で、天皇の戦争責任論にフタをしていた。まさに、9条の改憲は、そのフタをとることになるのである。

アメリカのグローバリズムの進展のためには、日本の自衛隊(軍隊)がアメリカにとって使いやすいものでなくてはならない。そのためには、憲法9条を「改正」して、その規制を緩和しようというものである。自由に外国に派兵でき、アメリカ軍と共同行動でき、さらに民間との複合軍産体制をつくれるようにしようというものである。そのためには、改憲が必要である。

そのように使いやすい日本の軍隊がアメリカを支援・援助し、さらには、その肩代わりをするような環境づくりが、まさに、現在の日本政府が目指す憲法の「改正」の目標だと考えている。そのことが、グロバリゼーションを進展させアメリカの覇権主義をより強固にする方法である。

この憲法の「改正」に一役買っているのが、北朝鮮の問題である。僕が03年12月21日に書いたものから引用する。

アメリカの軍事戦略の要は、日本と韓国との軍事同盟である。その軍事同盟を強めるためには、北朝鮮の脅威はかっこうのものである。北朝鮮の脅威があるから、アメリカとの軍事同盟を強める必要があるというプロパガンダは効果的な戦略である。
例の不信船問題やテポドンの発射問題付近から、急激に北朝鮮の脅威が宣伝され始めた。さらにら致問題に至り、北朝鮮はら致事件を起こすテロ国家であり、その国家体制は独裁によるもので、すぐにでも転覆させてもかまわない国家であるという啓蒙が、日々テレビで流された。
(中略)
しかし、現実のアメリカや日本政府の戦略は、北朝鮮の脅威を必要以上にあおり、その脅威論によって日米の軍事同盟を強めようとしているように見える。さらに、ここにはアメリカと北朝鮮の戦略が、日本より優先されている現実を感じている。北朝鮮の体制が生き延びるのは、アメリカの態度にかかっているように思う。それ故に、北朝鮮はMDのためにはテポドンを太平洋に向けて発射するし、不信船事件も起こす。これは、まさにアメリカの外交が望むことである。このような行動が北朝鮮の体制を維持する方便のように感じる。

北朝鮮にとっては、核やミサイルの不安を煽ることで、現体制を維持しようとし、アメリカにとっては北朝鮮の脅威は、日本の「イラク派兵」や「テロとの戦い」をすすめる上で都合がいいものである。お互いの利益にのっとり、日本は戦争による命の代償として確立してきた「平和主義」を投げ捨てることになる。

憲法「改正」の問題は、グローバリゼーションの視点で見ると、アメリカが日本の自衛隊(軍隊)をつかいやすくするためのものであると言っていいだろう。そのことで、アメリカの覇権主義に経済はもちろんのこと、軍事面においても日本がアメリカに完全に組み込まれることを表している。憲法「改正」は、戦争のグローバリゼーションのための自衛隊の規制を取り去るための規制緩和(規制解除)と言うことができる。そのように思ってしまう。