在沖米軍による沖縄県鳥島演習場における劣化ウラン弾誤射事件について

1995年12月から96年1月にかけて、在沖米軍が、沖縄県鳥島の演習場にて劣化ウラン弾を誤射した事件があった。それに関連して、「劣化ウラン含有弾の誤使用問題に関する環境調査の結果について(平成10年実施分)」という報告文書が文部科学省のサイトにある。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/10/09/980912.htm
また、「日本の環境放射線放射能」というサイトに「参考:劣化ウラン含有弾の誤使用問題に関する環境調査の結果について(平成14年11月)」というものがある。この報告書の参考5「劣化ウラン放射線及び金属毒性による影響について」P.31というものがある。
ここでは、情報がデジタル化されていない。そこで、僕が下記のような記述があったことを引用する。

参考5
劣化ウラン放射線及び重金属毒性による影響について

1.標記の件については、平成9年6月の本委員会報告書「劣化ウラン含有弾の誤使用問題に関する環境調査の結果について」の参考3において、
「今回の誤使用問題において想定されるウランの化学形態は、金属ウランや二酸化ウラン、八酸化三ウラン等の不溶性の酸化物であり、硝酸ウラニルなどの可溶性の化合物は想定されていない。
 劣化ウランは、アルファ線ガンマ線の2種類の放射線を放出しているが、天然ウランよりもそのレベルは低い。外部被ばくについては、アルファ線の透過力が小さいため影響力はほとんどなく、ガンマ線放射線レベルが比較的低いため影響が小さい。一方、内部被ばくについては、二酸化ウラン、八酸化三ウラン等の酸化物は不溶性であるため、経口摂取では速やかに排出されてしまい問題にはならないが、吸入摂取ではアルファ線による内部被ばくの影響を考えねばならない。
 ウランの重金属毒性については、硝酸ウラニルなどの可溶性の化合物の形で経口摂取した場合には、鉛などの他の重金属と同様に腎臓や肝臓への影響を考えなければならないが、不溶性の化合物の形で経口摂取した場合には、速やかに排出されてしまい問題にはならない。今回の誤使用問題においては、硝酸ウラニルなどの可溶性の化合物は想定されてないため問題にならない。」としている。
2.その後、世界保険機構(WHO)、米国環境有害物質・特定疾病対策庁(ATSDR)、英国王立学士院(The Royal Society)、国際放射線防護委員会(ICRP)、及び国連環境計画(UNEP)などの報告書が出されている。これらの報告書を踏まえて、劣化ウラン弾に関連するウラン化合物の健康影響に関する記載をとりまとめれば、以下の通りとなる。

・ウランから出る放射線はわずかなため、外部被ばくの影響は少ない。
・摂取に伴う影響として、内部被ばくによる健康影響、及び化学(重金属)毒性による健康影響を考慮しなければならない。
・内部被ばくによる影響は放射線発がんの可能性である。化学(重金属)毒性による健康影響は、腎臓機能への影響等である。
・天然および濃縮度の低いウラン、劣化ウラン等の場合には、化学毒性のによる健康影響のほうが、放射線被ばくによる影響よりも大きい。
・ウラン化合物は、化合物の種類によって、体液に溶け易い(硝酸ウラニル等の可溶性化合物)ものと、溶け難い(二酸化ウラン、八酸化三ウラン等の不溶性化合物)ものがあり、それぞれ体内における動態が大きく異なっており、健康への影響も異なる。
・可溶性ウラン化合物は、呼吸により吸入摂取しても、飲食物摂取により経口摂取しても、およそ2%程度が体内に吸収され、代謝経路を経た後に尿等を通じて対外に排泄される。しかし、体外に排泄されるまでの間は、化学(重金属)毒性による健康影響を考慮しなければならない。
・不溶性ウラン化合物は、経口摂取しても、胃腸管への吸収は0.2%程度と吸収され難く、糞便等と共に排泄されてしまうため、可溶性ウラン化合物を経口摂取した場合と比較して問題にならない。
・不溶性ウラン化合物を吸入摂取した場合には、体液に吸収され難く、肺の繊毛運動等によって徐々に気管支、気管へと排出され、食道、消化管に落とし込まれて体外に排泄されるまでの間、呼吸気道における放射線被ばくの影響について考慮が必要になる。しかし、この影響は、同量の可溶性ウラン化合物を吸入摂取した場合の化学(重金属)毒性影響より小さい。

また、この事件に関連する琉球新報の社説がある。
http://www.ryukyushimpo.co.jp/shasetu/sha23/s030529.html

文科省の調査結果についての僕の考えおよび、劣化ウランおよび劣化ウラン弾についての僕の考えは、次の回の日記に書いてみる。ただ、この件に関して左だの右だのという二元論に帰着させることには、僕は少しも関心がない。また、そのことが、劣化ウランの理解の混乱を大きくさせている一因のように考えている。